放課後の音楽室で
「…上田くん」

「ん?」

佐久間は、ちょっと言いにくそうに俺の名前を呼んだ。

膝の上で手を重ねたまま、ゆっくりと佐久間が顔を上げて、俺の顔をまっすぐ見つめる。

「…もう少し、チャージしていい?」

チャージ?

これ以上どうやって、と思った瞬間、佐久間が言葉を続けた。

「…ちょっとだけ、背中向けて?」

えっ?背中?

「こう?」

疑問に思いながら立ち上がって佐久間に背中を向ける。

「…びっくりすると思うけど…」

背中から佐久間の声が聞こえたのと同時に、ぎゅっと背中の服が掴まれた。

そして、佐久間のおでこが、ちょうど背骨の辺りに触れた。

「さ、佐久間…?」

「…ごめんね。ちょっとだけ」

佐久間の思いがけない行動に、俺の体温がものすごく上がる。

しかも、俺の心臓の音丸聞こえなんじゃ。いや、そんなことより…

「…実は、結構辛かった?」

「…うん。あと、模試のプレッシャー」

そうだよな。志望校判定出るし…。

「弱音吐いてる場合じゃないって分かってるの。…だけど、ちょっとだけ」

ぎゅっと俺の服を掴む手に力が入ったのが伝わってきて、俺の心臓も一緒に締め付けられる。




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