押し倒して、鼻先にキス。
「いえ全然惚れてません!」
「そっかあー、とりまライン教えて?」
ひええええ、やっぱりこの人全然話通じないよ…!
「わ、私急いでるんで…!」
どうせナンパ男はすっかり忘れているんだろうけど、どうか気づかれないようにと願いながら、顔を隠すように俯いてナンパ男の脇を通り過ぎた。
「そっかー、仕事がんばってねえ」
ナンパ男の間の抜けた声がぬるりと背中を追ってくる。
「あ、免許また今度持ってくわー」
――え。
思わず足を止めて振り向くと、ナンパ男が極上に整った顔に綺麗な笑みを浮かべて。
パタン、と部屋の扉が閉まった。