押し倒して、鼻先にキス。
「というわけで…今日泊めてください!!」
支店の小さな応接室。
という名の、実態は職員の休憩スペースとして利用されているそこで、私は同期の四條亜紀に向かって両手をすり合わせた。
「またぁ?」
大きな口をあけてお手製のおにぎりにかぶりつきながら、無遠慮に呆れた視線を向けてくる亜紀ちゃん。
「またぁ?って、久しぶりじゃない?最近3か月くらいは泊まってなかったし…」
「じゃなくて、浮気されんの」
亜紀ちゃんのおにぎりからは、鮮やかなオレンジ色の焼鮭がのぞいている。おいしそー…
「うん!これで8回目!ちなみに現場に出くわしたのは3回目!ちなみに今回は彼氏の誕生日、サプライズを企画していた日の出来事でした!」
「元気に言ってるけど内容悲惨過ぎるから。ていうかまさか心瑚、お昼それだけ?ブラックサンダーって…」
「うん!昨日彼氏に追い出されたからまた引っ越ししなきゃだし!節約しようと思って!」
ありがとう、ブラックサンダー。
ありがとう、ブラックサンダーを作ってくれているお菓子会社の人。
ここで一人、お腹をすかせた金欠サレカノが救われています。