嫌われ夫は諦めない


(あれだけ冷たく言えばすぐに王都に帰ると思ったのに)

 あれからすぐにリディオの婿入りのための品物を乗せた馬車が到着した。本来ならば何人かの召使を、自分の身の回りの世話をするために残せる身分であるが、それらを全て断って王都に戻してしまう。

 結局、シャスナの普段の生活を知りたいと言ってスティーズレン侯爵家に残っている。

(こんな所にいなくても、侯爵位だけ持って帰ってくれればいいのに……)

 リディオの家令が王都に戻る際に、二人が結婚誓約書に署名した書類を持ち帰っている。そのため紙面の上では二人はもう夫婦となった。王妃の命令とあれば覆すことはできないけれど、別居して仮面夫婦になることはできる。

 その方がお互いの為だと思うのに、リディオは一向に出ていく気配がない。こうなったら地味に嫌がらせをして、出て行ってもらおうとシャスナは考えた。

「殿下、王子様はまき割りなんてできませんよね?」
「なっ、俺を何だと思っているんだ?」
「王宮でお育ちになられた王子様でしょう?」
「い、言ったな!」

 わざと無理難題を言ったつもりなのに、リディオは腕まくりをして取り組み始める。最初はぎこちなかった斧使いも、コツを掴んだ途端スピードが速くなる。さすがに騎士団にいただけのことはあり、リディオは力仕事が得意そうだった。

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