誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「そうでーす。悠希さんが結婚してくれたら宮下から逃げられると思ったんです。そして夢だった法律関係の仕事ができるかもって」
 そう、悠希さんはお父様の命令で宮下の家柄を手に入れるための結婚を、そして宮下家は援助のためだけの政略結婚。
 いつか、あの家を出てひとりで生きて行きたい。そんな打算だらけの汚い私。

「悠希さんにとっては迷惑な話ですよね……」
 アルコールというのはこんなにも思考を支離滅裂にさせるのだと思うも、それを止められなかった。

「両親はいきなりいなくなっちゃうし、大学はやめなきゃいけなくなるし、引き取られた先は最低だし。でも一生懸命勉強してたんです! 悪いですか?」

 アルコールも手伝い私はスラスラと言葉が零れ落ちる。完全に絡み酒だ。

「ごめんなさい……」
 何も言わない彼の顔が怖くて見られなくて、私は姿勢を正すと俯いた。
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