誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「語学は独学?」
「はい、でも両親が話せましたし、昔は家に海外のお客様もよくいらっしゃっていたので必然的に」
 まだ裕福なときは何も知らないお嬢様だったと思う。

「でも、よかったんです。貧しくなって、小さな村に逃げる様に引っ越したけど、そこから幸せだったんですよー。両親の愛を感じてたし、夢もできたから……」
 完全に言ってはいけないことを言っている気がして言葉を止めた。

「やだ、お酒ってこんなになるの?」
 自分の感情がまったくコントロールできずに呟くと、悠希さんが「いいよ、吐き出せば」と私の言葉を促す。

「どうして、今日は急に優しいんですか?」
 一緒に夕食を食べると言ったり、素の彼をみせてくれたり、悠希さんが何を考えているか理解できない。
 だから、その優しさに甘えていいのかもわからない。

「昨日までと違う!」
「そうだな」
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