誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

　私の指摘を悠希さんも認める様に苦笑した。でも、そのブラウンの瞳が優しくて泣きたくなる。

「宮下の家では円花や叔母の命令には逆らえなかったから、こっそり勉強して。ようやく今日仕事に行けたんです」
　どうしたのだろう？　ぼんやりする頭では何もわからないが、悠希さんはた目を見開いて私を見ていた。

「ひとりぼっちになって、死のうと思った日もあったけど、死ななくてよかったな。悠希さんのお陰で夢がかなったから……」
　そう言葉にしたところで、昔の記憶がよみがえりポロポロと涙が零れ落ちる。酔っぱらった挙句、今度は泣くなんてと少し我に返り、強引に涙を拭うと、いきなり隣から手が伸びてきてギュッと抱きしめられる。

「それから？」
　その意味がわからないが、久しぶりに誰かの体温を感じた私は、もう涙を止めることができなかった。