誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 彼のシャツの色がどんどん変わっていく。
「悠希さんの服汚しちゃう……」

「酔ってるのに、そんなこと思うなんてまったく天音はお人よしだな」
 初めて聞く優しい声音に、ブワっとまた涙が溜まっていく。そして我慢していた気持ちが溢れてしまう。

「だって、だって。もう何年も私はひとりだったの。寂しかったの。何を言われても、どれだけ虐げられても、私は生きてる……」

「そうだよ、天音は生きてる」
 その声はあの時の人と重なった。そして私は確信する。悠希さんがあの時の人だと。この数年で彼にも何があったかわからない。山岸先生が言うように、弁護士という仕事に疲弊したのかもしれない。

 でも、やっぱり彼は優しい。こんな得体のしれない私を抱きしめて慰めてくれる。
 私のことを信じられないと言っているのに、触れる手も、言葉の端々も優しい。
 そう思うと、私はギュッと彼の首に抱き着いた。拒否されるかと思ったが、悠希さんは優しく背中をさすって抱きしめ返してくれた。
「本当にごめんなさい……」
 その温もりが嬉しくて、私はそう呟くとそのまま目を閉じた。
 
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