誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
※※※ Side 悠希
腕の中で寝息を立て始めた天音をそっとソファに寝かそうとすると、天音は甘えた様に俺の膝の上に頭をのせ丸まった。
男の膝枕は固いかもしれないと、ゆっくりと膝を抜きクッションを引いてやると、慌てて天音がキュっと俺の手を握りしめる。
いつもの俺だったら確実にこの手を振り払っていたが、無意識に俺が握り返すと天音は安心したように微笑み寝息を立てた。
そんな彼女を少しの間見つめた後、ゆっくりとビールに手を伸ばし流し込む。
今日、どうせわからないだろうと彼女に専門的な話をするも、すぐに理解し先回りをして答えたことに驚いた。あの法律用語ばかりの英語を聞き取れただけで十分あの会社で働く知識はあるだろう。
どんどんと知るたびに変わっていく彼女の印象。コロコロと変わる表情や時折照れたように俯く仕草。
しかし、時折どこかに行ってしまいそうに、遠くを見ている悲し気な表情。円花から聞いていた女性とはどうしても思えなかった。『宮下のお嬢様で、ぬくぬくと育ってきただの、男癖が悪く、遊びすぎているから悠希さんの相手にはなれない』円花は微笑を浮かべながらそう言った。それを鵜呑みにしていたわけでもないが、嘘だとも思っていなかった。
いや、そんな円花の話は正直、あの時の俺にはどうでもよかったのだ。