誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 そう、円花でも天音でもどうせ愛のない結婚をしなければいけないのなら、どうでもいいと思っていた。
 アメリカの大学卒業して、駆け出しの弁護士のころは離婚調停や、遺産の相続など、勉強になる案件はなんでもやった。数をこなして、結果を出してすぐに父に追いつきたい、そんな思いでがむしゃらに仕事をした。
 
 そして、それが人間の醜い部分も知ることになった。愛憎、憎み、愛し合った人たちが、お互いを罵りあい、時には暴力に訴える。
 愛し合ったという事実などどこにもなくなっていく。壊れていく人々を必死に弁護するのに、俺はいつしか心をシャットアウトしていたのかもしれない。
 
 どんなときでも冷静で、そのまとうオーラすら怖い。そう検察や相手の弁護士から言われていることも知っている。
 だからこそ、俺は誰でもいいと思っていた。しかし、円花という女性はどうしても無理だった。
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