誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 涙が零れそうになるのがわかり、私は寝室へと逃げ込んだ。

 泣いている私を見れば、優しい悠希さんはきっと気にするはずだ。キングサイズのベッドに倒れこむと、枕に顔を埋めた。そして漏れる嗚咽を隠すように、ギュと唇をかみしめた。
 
 身体だけでも好きな人と繋がりたい。そんなことを思った私はずるくて卑怯な人間だ。これ以上望んだらいけない。
 
 そう思っていた時だった。肩に触れられたと思った途端、くるりと身体の向きが変わった。
 腕を頭上で縫い留められるようにされ、私の上にまたがり切ない目で私を見下ろす悠希さん。
 
 しばらく無言でお互い見つめあっていると、不意にゆっくりと唇がふさがれる。
 驚いて目を閉じることすらできなかった私は、初めて至近距離でブラウンの瞳を見た。
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