誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 目を閉じず唇だけが触れ合っている今の状況にわけがわからない。でも、今一番近くに彼がいることだけが現実だった。

「俺は誰も愛せない。それでもいいのか?」
 驚きすぎて、固まっていた私だったが、その言葉に小さくうなずいた。
 このチャンスを逃したら、きっと私は愛する人に抱かれることなどないだろう。
 彼の瞳にはまだ迷いのような揺らめきがある。

「私でもその気になれますか? こんな女らしくない私」
 そう言うと彼は真剣な瞳のまま、縫い留めていた手を離すと、するりと頬を撫でた。

「だれがそんなことを言った? 天音は綺麗だよ」
「ツっ」
 まさかそんな言葉をもらえると思っていなかった私は、また涙が零れ落ちる。

「私なんかって言葉は禁止しただろ?」
「そうはいっても自信なんてない……」
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