誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

　お互い仕事をしているからといっても、私の方が帰る時間も早いし、かなり忙しい彼にはきちんと食事をとって欲しい。

「おはよう、今日もありがとう」
　スーツのジャケットを片手に、階段を下りてくる彼に私も笑顔で挨拶を返す。
　一緒に食事をとった後、先に出かける悠希さんを見送るためにリビングを出た。
　広い玄関には日差しが降り注いでいて、スーツ姿の悠希さんに見惚れてしまいそうになる。

「行ってくるな。午後からは事務所に戻るから」
　今日は朝から謁見に行くため、いつもより少し早い出社の彼。
今はこの姿になっても、仕事の口調になることはなく、表情も穏やかだ。初めのころが嘘のようで、心を許してくれているようで嬉しい。

「はい、いってらっしゃい」