誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
十月は私が一番好きな季節かもしれない。そんな街並みを見ながら、私は事務所へと足を踏み入れた。
「おはようございます」
「おはよう」
すでに来ていた人たちに挨拶をしつつ、。今、松永システムの件はチームで行っているため、山岸先生たちの元へと向かう
「宮下さん、この件ヒアリングお願いできる?」
山岸先生の声に、私が「はい」と返事をしつつクルリと椅子を回せば、ジッと彼の視線を感じた。
「山岸先生?」
確かに、女性との距離は近い人だし、悠希さんとは真逆のタイプの山岸先生だが、こんなにマジマジと見つめられたことはなく少し後ろに下がった。
「天音ちゃん、顔色が悪くない? リップの色かな?」
「え? そうですか?」
その言葉に自分が恥ずかしくなってしまう。ただ心配してくれただけなのに、なんて自意識過剰なのだろう。
恥ずかしさを隠すように、手で自分の顔を仰ぎながら彼の今の言葉に頭をひねる。