誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 だから、私以上にそのことには気を付けていたはずだ。

「天音ちゃん、大丈夫?」
 山岸先生が顔を覗き込んでいたが、そんなことを気にすることができず私は呆然としていた。

「早めの休憩に行って来たら? 昼から沢渡先生も戻られるでしょ?」
 友麻さんの提案に、私がすることはひとつしか思いつかなかった。
 すぐ近くにドラッグストアがあったはずだ。

「あの、ありがとうございます。それでは少し早いですが休憩いただきますね」
 パソコンをシャットダウンすると、私はバッグを持って立ち上がった。昼前ということで、それほどオフィッスの外に事務所の人がいなくてほっとしつつ、人目を確認しつつ薬局へと向かい、妊娠検査薬を購入した。
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