誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 会社でこんな検査をしてはいけない。そうは思うも、この不安をどうしても拭ってしまいたかった。バッグを持ったまま、トイレの個室に入り、呼吸を整えてから検査をする。

 箱には十分ほどで結果が出る、そう書いてあるが……。そんな時間を要することなく、くっきりと浮かび上がるライン。私の中は頭が真っ白になっていく。

 どうしよう。悠希さんに話さなければ。そう思う気持ちと、知られたら一緒にいられない。そんな気持ちが交錯する。

 とりあえず、まだ検査薬だけだ、もしかしたら間違いということだってあるかもしれない。
 背中に冷汗が流れ落ちるのを感じながら、しばらくトイレの中で放心していた私だったが、今はまだ会社ということを思い出した。

 仕事はしなければ。そう思いフロアへと戻った。
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