誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「大丈夫? やっぱり顔色が悪いけど」

「はい、ありがとうございます」
 友麻さんに曖昧な笑みを浮かべる。内心はまったく穏やかではない。

「宮下さん、ちょっといい?」
 フロアの入り口から聞こえた声にドキッとした。それは紛れもなく悠希さんの声で、出社してきていたのだ。
 果たしていつも通りできるだろうか。ドキドキと心臓の音がうるさくて返事ができない。

「天音ちゃん、沢渡が呼んでるよ?」
 山岸先生の声に、私は無言で立ち上がった。仕事なのだから呼ばれたらいかないわけにもいかない。
 俯いたまま自分のパソコンを手にすると、悠希さんの個室へと行く。

「宮下さん、S社の答弁書の清書はできてますか?」
 冷静な抑揚のない声は仕事用だとわかっているのに、なぜかキュッと胸が締め付けられる。
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