誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 穏やかな声にかなり緊張しつつ私はベッドに横になった。
 少しして先生はモニターを見ながら、一か所で止めた。

「わかるかな? これが赤ちゃん。心拍も確認できるわね。九週から十週ぐらいかな」
 小さな豆のような形の中に、確かにドクドクと動いているものがある。
 それを見て私は何とも言えない気持ちが沸き上がってくる。涙がでそうになるのを堪えつつ、私はハッとする。

 九週ということは、三カ月目に入っているということだ。こんなになるまで気づいていなかった自分に嫌気がさす。

「あの、本当に少しなんですけど、お酒も飲んじゃったんですけど大丈夫ですか?」
 悠希さんにどう伝えるかばかり考えていたはずの私だったが、口から出た言葉は赤ちゃんを心配することばかり。そんな自分に驚きつつ先生に必死に尋ねていた。

 もうこの子を守ろうと思っている自分。産むか産まないかなんて悩むまでもなかったのだ。
 働き出して半年弱で仕事もやめることになるだろう。
 中途半端なことをすることは最低だが、宮下の家に戻らなければ、どこか知らない土地で翻訳でもなんでも働いてこの子とふたりで生活できる。

「大丈夫よ、それぐらい。知らなかったんだしこれから気を付ければいいわ。あと、今の時期は夜の方は少しやめておいてね」
 赤裸々な先生の話に真っ赤になってしまう。確かに夜悠希さんと眠る時間が同じときは抱き合うことも多い。
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