誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 気を付けなければいけないことだ。それにはやはりきちんと妊娠のことを伝えなければ。

 また振り出しに戻ったような気持になっていると、先生がまだまだ小さくて、赤ちゃんだとわからないぐらいの写真を私に渡してくれる。

「母子手帳ももらってきてね」
「はい」
 静かにそう答えると、私はお礼を伝えて診察室を後にした。
既婚ということで、産むか産まないかという質問はもちろんなく、むしろ「おめでとう」そんな雰囲気が漂う。次の予約を取ると私は病院を後にした。
いろいろなことをぐるぐると考えていた私は、ぼんやりと夕方の街を歩いていた。

 一軒のショップの前に飾られたベビー用品や、小さい子供の可愛らしいワンピース。
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