誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「秘密は持っても構わないが、今は契約で俺と結婚していることを忘れるな。それとももうやめたくなったか?」

 怒気を含んだその言葉は、最後は冷笑にかわる。冷ややかなその言葉に、頭から氷水をかぶされたように身体が冷たくなっていく。

 契約で結婚した。そうだ、ただ、私たちはそれだけの関係だ。
 この子をもしかしたら産んではいけないと言われたら? そんな気持ちが頭をめぐる。
 何も言えずにいると、いつの間にか彼は私の服を脱がし始めた。荒々しくただ義務のように愛撫する彼。
 そこで今日の先生の言葉が頭に浮かぶ。

「嫌!」
 赤ちゃんが。咄嗟に思った私は思い切り彼の胸を押した。まさか私が拒むとは思っていなかったのか、驚いて目を見開いた悠希さんの真っ黒の瞳とぶつかる。

「妻の役目も果たせないのか?」
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