誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

　言葉を止めた私に、悠希さんも俯いたままだ。そして呟くように私に問う。
「産みたくないのか？」
「違います。病院へ行って赤ちゃんがいることがわかって、どうしても産みたいって思ったんです」
「じゃあ、どうして離婚なんて」
「それは」

　何と答えるのが正解かわからず、そこで言葉を止めると、悠希さんは静かに息を吐いた。

「天音、離婚はしない。いやできない」
「え？」
　その言葉の意味が理解できず、私が聞き返すと悠希さんは顔を上げて真っ直ぐに私の瞳を見た。

「子供には両親が必要だ」
　友麻さんの話を思い出す。彼の幼いころの事情もあるのかもしらない。子供ができたとわかれば、彼はこういうことがわかっていた。責任感の強く、優しい人だ。心のどこかでそう言ってくれるかもしれないと思っていた。