誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

 確かに、今はうまくやっていると思う。しかし、本当にこれでいいのか、そう思う日ももちろんある。離婚前提で結婚をして、愛は必要がないという悠希さんを、この子で縛り付けている。もちろん私はできるなら、彼に好かれてずっと一緒にいたい、そう思っていたが、一生愛されないことは寂しさを感じることもある。

 そんな時、玄関のインターフォンがなり、私は我に返ると悠希さんを出迎えるために立ち上がった。
 そこに向かうと、靴を脱いでいる彼が目に入った。
「おかえりなさい」
「天音、いつも言うだろ? 迎えはいいって」
 心配そうに私のお腹と顔を見ながら、悠希さんは苦笑交じりに言葉を発した。

「大丈夫ですよ。体調はすごくいいんです」
 笑って見せれば彼はホッとしたような表情を浮かべた後、私の頬に手を伸ばすと優しくキスをする。本当の新婚のようなやり取りをしているからこそ、いろいろなことが欲張りになり、愛されてると勘違いしそうになるのかもしれない。
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