誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 それを何とか耐えて、彼の瞳をまっすぐに見つめた。

「あら、返事をしに来たのかしら?」
 そんな彼を見ても円花は特に狼狽する様子もなく、腕を組んで階段の上から彼らを見下ろす。

「ああ、そうだ」
 地を這うような低い声で悠希さんは言うと、一歩ずつ私たちの方へと近づいてくる。

「天音もこうして了承して戻ってきたし、あなたも変な返事はしない方が見の為よ。あっ、でも話すことはできないのかしら?」
 我が従妹ながら愚かすぎて言葉もでない。これだけ優秀な弁護士である悠希さんが、話せないなんて思うなんて。

「仕事もどうせ大したことないのよね。親の七光りはいいわね。でも、沢渡の力は魅力的だしね。でも、天音を愛人にするのはもう少し後にしてもらうわよ」

 何も言わないことをいいことに、円花は言いたい放題だ。
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