誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

「なによ、こんな女と比べて私のどこが劣るというのよ!」
「お前のような女と天音を一緒にするな!」
 その迫力に、とうとう円花は座り込んでしまった。それを見て、悠希さんが私に視線を向ける。

「天音、大丈夫だから。おいで」

 円花と対峙していた時とは別人のような、優しいその瞳に、私は絶対に大丈夫だと思えた。
 私は彼の元へと向かうと、その手に身を任す。ギュッと抱きしめられて、私は涙が零れてくる。

「悠希さん、悠希さん。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
「天音、謝らなくていい。何も悪くないから」

 泣きながら謝る私の背中を優しくさすってくれる。

「何事だ」
 松原さんか宗次さんが連絡をしたのか、急いで会社から戻ってきた祖父と叔父が玄関から入ってくるのが見えた。
< 263 / 331 >

この作品をシェア

pagetop