誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

「天音のことを守るのは俺だけでよかったけど、まあ、今回は仕方がない」
　私の耳元で悠希さんはそう言うと、また円花たちに対峙する。

「不貞行為の隠蔽、隠し撮り、そして嘘偽りだらけの天音への脅迫。立派な犯罪ですね。犯罪者の娘でしたっけ？　それより悪いのでは？」
　言葉遣いは丁寧だが、その非情と言われる所以の冷たい物言いに、敵には回したくないと本気で思うほどの迫力だ。

「何よ……あんなに話もしなくて、暗くて、つまらない男だったじゃない」
　負け惜しみのように言う円花に、悠希さんは眼鏡を取ると、セットされていた髪をクシャっと自分でかき乱した。

「話す価値が自分になかっただけだろ？」
　そのゾクリとするほど美しく、妖艶な雰囲気を感じさせる彼に、円花は啞然として口を閉じた。