誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

「そして……」
 悠希さんはそう言葉にすると、友麻さんに視線を送った。友麻さんは大きくうなずくとどこかへとスマートフォンで連絡をしているようだった。

 そして数分後、玄関ホールの扉があき、数人の男性が入ってきた。ビシっとしたスーツ姿で寸分の隙のない男性たち。
 その中でも先頭にいた男性は、端正な顔立ちでピリッとしたオーラを放っていた。その雰囲気は悠希さんとはまた違っているが、まっすぐに祖父を見つめる瞳は獲物を捕らえる様に鋭い。

「東京国税局査察部 三枝彰斗(さえぐさあきと)です」
 その瞬間、今まで後ろで成り行きを見ていた、祖父が逃げる様に階段の方へと走っていくのが見えた。
 いつもはゆっくりと歩いているところしか見たことがなかったが、こんなにも早く走れたなんて。変なところで感心してしまった。
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