誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

「宮下さん、今あなたの会社にも一斉に捜査員が入っています」
 静かに三枝さんの声がホールに響いた。そのセリフに祖父は「うるさい! わしは知らん!」と叫ぶ。
 終わった。そう思った時だった。

「結局、おじい様が犯罪者だから私がふさわしくないって言うなら、天音だって沢渡家の嫁にふさわしくないじゃない」
 髪はふり乱れ、さっきまでの可憐さはどこにいったかと思うほど、今の円花は別人のような形相をしていた。そんな円花が負け惜しみのように言う。

 その言葉に私は今までの安堵した気持ちが粉々に壊れていく。どこまでいっても宮下家はもはやなにもなく、沢渡家に迷惑をかけるしかない。

 やはり身を引くべきだ。そう思っていたときだった。隣の悠希さんを見つめれば、悠希さんは微笑を浮かべていた。
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