誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

 しかし私がいる場所は質素な和館で、昔ならば多少趣があると言えたかもしれないが、今はただ古い小屋だ。
 和室にベッドは、今流行りのモダンを意識したわけではなく、ただ使わなくなったものを回されているからだけ。

 セミダブルサイズのシンプルな木枠だけのベッドに、統一性のない色のカーテンや寝具。無駄にある床の間が異質な気さえしてしまう。
 まさかこの広大な敷地の一角に、こんなところがあるとはだれも想像しないだろう。

 宮下天音、つい先日二十七歳になったばかりだ。

 背中までの真っ黒の長い髪は、自分でセルフケアしているだけのため、これまで染めたことがない。
 身長は少し高めの百六十二㎝、痩せ気味で、女性らしい体形をしていないことが悩みだが、これと言って不自由はしていない。
< 3 / 331 >

この作品をシェア

pagetop