誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
ゆっくりと彼の元へと歩いていき、その手を取る。
「綺麗だな」
いきなりそんなことを言う悠希さんに、照れてしまう。
聖歌隊とパイプオルガンの厳粛な雰囲気で式が進められていく。
「指輪の交換をします」
その神父様の言葉に、指輪を取ろうとして驚いてしまう。ひとつは確かに、結婚指輪で私と悠希さんが一緒に決めたものだ。一生ずっとつけられるようにと、シンプルなタイプのものだ。
そっと悠希さんがリングピローに乗せられた指輪を受け取ると、もう一方の手で私の左手を取る。そしてその指輪を嵌めてくれた。
「あと、遅くなってごめん」
そう言うと、もうひとつの指輪を受け取り、それも重ねてつけてくれる。その見事なダイアモンドの指輪に驚いてしまう。
「ありがとうございます」
あまりにも予想外で嬉しくてずっと眺めていたかった私だが、神父様の小さな咳払いでハッとして慌てて指輪を受け取る。
そして緊張しながらも、悠希さんの指にそれをはめた。
滞りなく式を終えることができ、食事会の席へと移った。
今日は悠希さんが、私も食べやすいようにと和を意識したフレンチ料理のコース。
親族だけの急な式だったにも関わらず、悠希さんの弟の琉希さんも来てくれて、初めてお会いすることができた。