誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 お義父様達も、なごやかな雰囲気で話してくれているのを見て、ホッと安堵する。

「それにしても兄貴、よかったな。素敵な女性を見つけられた」
 少しだけ距離があったと聞いていたが、琉希さんは気さくな人で、私にもすぐに打ち解けることができた。

「ああ、次は琉希の番だな」
「え」

 琉希さんも結婚願望がないのか、不味いことを言ってしまったといったような表情を浮かべた。
「そうだぞ、琉希、お前も会社を引っ張る身として独り身はそろそろやめなさい」
「うわ。今までは兄貴ばかりに言って言葉が俺になるのかよ。俺はいいんだよ」 

 ため息交じりに言った琉希さんに、悠希さんがニヤリと笑う。

「お前も適当な恋愛はそろそろ卒業しろよ。結婚はいいぞ」

「兄貴の口からこんな言葉を聞く日が来るなんてな。でも俺だっていろいろあるんだよ。というか、俺の話はいいよ。今日の主役は兄貴たちだろ」

 一瞬だけ見えた少し悲し気な優希さんの表情に、いろいろなことがみんなあるとわかる。
 彼にも幸せになって欲しい。そんなことを思った。
 
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