誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 旧宮下財閥の令嬢、そう言えば聞こえがいいかもしれないが、私の人生は波乱万丈だ。

 私の祖父にはふたりの息子がおり、父は長男だった。
 昔ほどの影響力はなかったが、宮下家の跡取りとして、主要企業である宮下重工の取締役をし、立派に勤めてあげていた。
 私もその両親に恥じないように、勉学を初め社交性などを磨きつつも、愛情ある両親と幸せに暮らしていた。

 しかし、それが私が十三歳の時に呆気なく終わりを告げた。
 会社で大きな横領事件が起き、その時の主犯として父の名前が挙がったのだ。それから私たちの人生は一変した。家の前にはマスコミが溢れ、父は職を解雇されその場を逃げる様に日本海沿岸の町へと引っ越した。

 何年にも及ぶ裁判の結果、証拠不十分で父の無罪が確定したが、父はもう宮下に戻ることはなかった。
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