誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ

　結果、祖父の圧力か理由はわからないが、父もそれ以上控訴することもなく、父の汚名はきちんと晴らされないまま、事件は終わってしまった。

　そんな我が家だったが、父は小さな町工場に就職をし、母も弁当屋のパートにでたりした。忙しくもあったが、愛情は溢れていた。

『あんな悪意のある場所に天音は戻ることないよ。ふたりがお父さんを信じてくれればそれでいい』

　そう笑って言う父。
　決して裕福ではないが、小さな町の人たちにも支えられ我が家は慎ましくも幸せに暮らしていた。
　そしていつしか私は父がずっと話をしていた、お世話になった弁護士の先生に憧れ、法律関係の仕事を志すようになった。

『とっても優しくて、一生懸命にお父さんの弁護をしてくれているんだよ』

　そう嬉しそうに話をしていた父。私たち家族を助けてくれたことはもちろん、人を救うことができる弁護士という仕事にあこがれを持ったのは自然なことだった。