片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
「お願いします。これの反対側です」
エプロンのポケットから取り出された、小さな粒に思わず目を見張った。
控えめに煌めくシルバーの、フープピアス。ひねりの効いたデザインはシンプルだけれど、私の胸をざわつかせるには十分だった。
見間違えるわけはない。ここ最近私の頭から離れない、伊織さんの鞄に入っていたピアスと同じものなのだから。
「緋真先生?」
「あ……はい、わかりました。他の先生にも伝えておきます」
「ありがとうございます。これお気に入りだから、見つかるといいな」
唇を結びあげると、智美さんは会釈をして去って行く。
外向きの笑顔を浮かべながらも、顔が引きつるのを感じていた。
◇
その日の仕事終わり。郁ちゃんと訪れたカジュアルダイニングにて、先日のピアス騒動の件を話すと、彼女は眉を釣り上げてグラスを置いた。
「緋真ちゃんには悪いけど、それ絶対クロだよ」
新婚早々友人が不倫疑惑で悩んでいるのだ。郁ちゃんとしても怒るのは無理はないだろう。
こうもはっきり言われてしまうと、いかに自分が心のどこかで伊織さんを信じ込もうとしていたかがわかった。事実だけ聞いてしまえば、紛れもなくアウトだ。
「相手からの牽制じゃない? 伊織さんは気付いてる感じないの?」
「うん……。いつも通りだし、とくに変わらず」
私の気持ちに靄がかかっているだけで、伊織さんは至って普通だ。優しくて気が利いて、完璧な夫。それもあって、彼を信じる気持ちが捨てきれなかったのかもしれない。
「ちなみに、相手の人に心当たりは?」
「それが――」
智美さんに感じていた違和感、そして彼女がなくしたピアスの片方が、伊織さんの鞄から出できたものと一致していたことを告げると、郁ちゃんは目をぱちくりとさせたあとで声をあげた。
エプロンのポケットから取り出された、小さな粒に思わず目を見張った。
控えめに煌めくシルバーの、フープピアス。ひねりの効いたデザインはシンプルだけれど、私の胸をざわつかせるには十分だった。
見間違えるわけはない。ここ最近私の頭から離れない、伊織さんの鞄に入っていたピアスと同じものなのだから。
「緋真先生?」
「あ……はい、わかりました。他の先生にも伝えておきます」
「ありがとうございます。これお気に入りだから、見つかるといいな」
唇を結びあげると、智美さんは会釈をして去って行く。
外向きの笑顔を浮かべながらも、顔が引きつるのを感じていた。
◇
その日の仕事終わり。郁ちゃんと訪れたカジュアルダイニングにて、先日のピアス騒動の件を話すと、彼女は眉を釣り上げてグラスを置いた。
「緋真ちゃんには悪いけど、それ絶対クロだよ」
新婚早々友人が不倫疑惑で悩んでいるのだ。郁ちゃんとしても怒るのは無理はないだろう。
こうもはっきり言われてしまうと、いかに自分が心のどこかで伊織さんを信じ込もうとしていたかがわかった。事実だけ聞いてしまえば、紛れもなくアウトだ。
「相手からの牽制じゃない? 伊織さんは気付いてる感じないの?」
「うん……。いつも通りだし、とくに変わらず」
私の気持ちに靄がかかっているだけで、伊織さんは至って普通だ。優しくて気が利いて、完璧な夫。それもあって、彼を信じる気持ちが捨てきれなかったのかもしれない。
「ちなみに、相手の人に心当たりは?」
「それが――」
智美さんに感じていた違和感、そして彼女がなくしたピアスの片方が、伊織さんの鞄から出できたものと一致していたことを告げると、郁ちゃんは目をぱちくりとさせたあとで声をあげた。