片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
自分ではいつも通りのつもりだったが、きっと緋真の話を聞いて無意識に警戒しているからだろう。白鷹さんはわかりやすく不満そうな顔をしていたが、すぐに切り替えて口を開いた。
「こちら依頼があった色素性母斑の病理診断結果です」
「ああ、ありがとう」
「それから来月の学会出張の件ですが、ホテルと新幹線を予約しておきましたので後ほどスケジュールのご確認をお願いいたします。資料につきましても必要な準備があればお申し付けください。伊織先生が望むのなら同行もいたしますので」
「わかった。同行は不要だから問題ないよ」
あくまで業務上の話だが、彼女のことだから、わざわざこの件を伝えるためだけに診察室まで来たとは思えない。おそらく――
「伊織先生、これからお昼休憩ですよね、ご一緒していいですか?」
やはり、こちらが目的か。わざとらしく首を傾げ上目遣いまで向けられて、心の中でため息が漏れた。
白鷹さんの出会いは、初期研修時代にローテートした血液内科にて。実は彼女は難病指定とされる特発性血小板減少性紫斑病を患っている。症状としては明らかな基礎疾患や原因薬剤に関わりなく、血小板が減少することで出血症状を引き起こすもので、何度も入退院を繰り返していた。
最近は調子が良いらしく、少なくとも俺が帰国してからは一度も入院はしていない。
白鷹さんが入院中、研修医として関わった俺は、一目で彼女に気に入られてしまったようで、退院後も何かと理由をつけて病院へとやってきた。
渡米したタイミングで関わりはなくなったものの、帰国後同じ医局にいると聞いたときは、裏で手引きしたのかと疑ったほど。もちろん、そう思うのには理由があった。
「実は最近料理を始めたんですけど、まだ自信なくて……多めに作ってきたので伊織先生に感想もらえたらなぁと」
「……申し訳ないけど妻の弁当があるから。他の人に頼んでもらえるかな」
「こちら依頼があった色素性母斑の病理診断結果です」
「ああ、ありがとう」
「それから来月の学会出張の件ですが、ホテルと新幹線を予約しておきましたので後ほどスケジュールのご確認をお願いいたします。資料につきましても必要な準備があればお申し付けください。伊織先生が望むのなら同行もいたしますので」
「わかった。同行は不要だから問題ないよ」
あくまで業務上の話だが、彼女のことだから、わざわざこの件を伝えるためだけに診察室まで来たとは思えない。おそらく――
「伊織先生、これからお昼休憩ですよね、ご一緒していいですか?」
やはり、こちらが目的か。わざとらしく首を傾げ上目遣いまで向けられて、心の中でため息が漏れた。
白鷹さんの出会いは、初期研修時代にローテートした血液内科にて。実は彼女は難病指定とされる特発性血小板減少性紫斑病を患っている。症状としては明らかな基礎疾患や原因薬剤に関わりなく、血小板が減少することで出血症状を引き起こすもので、何度も入退院を繰り返していた。
最近は調子が良いらしく、少なくとも俺が帰国してからは一度も入院はしていない。
白鷹さんが入院中、研修医として関わった俺は、一目で彼女に気に入られてしまったようで、退院後も何かと理由をつけて病院へとやってきた。
渡米したタイミングで関わりはなくなったものの、帰国後同じ医局にいると聞いたときは、裏で手引きしたのかと疑ったほど。もちろん、そう思うのには理由があった。
「実は最近料理を始めたんですけど、まだ自信なくて……多めに作ってきたので伊織先生に感想もらえたらなぁと」
「……申し訳ないけど妻の弁当があるから。他の人に頼んでもらえるかな」