片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
式場はホテルだったにも関わらず、私たちは和装婚を選択した。もちろん私の希望で。式は白無垢を着用し、その後の披露宴でのお色直しは、迷った末に色打掛を選んだのだ。理由は言うまでもなく私自身の問題だった。
「ドレスだと背中が出るデザインが多いでしょ? だから、和装のほうがいいかなって」
「やっぱりそういう理由だったんだ」
背中を隠すドレスもあったがデザインは限られている。であれば見え方を気にするよりも、完全に覆ってしまえる和装のほうが気が楽だったのだ。
「……本当はドレスも着たかった?」
「うーん、実はちょっとだけ」
ウェディングドレスに憧れたことがないと言えば嘘になる。しかしながら、物心ついたときには既にコンプレックスがあったし、おそらく無理なのだろうと理解はしていた。正しくは”諦めて”いたのだけれど。
「でも後悔はしてないよ。強いて言えば、伊織さんのタキシード姿見たかったな」
「大したものでもないと思うけど」
「そんなことないよ! 伊織さん、かっこいいから何でも似合うと思う!」
食い気味に否定したあとで我に返る。伊織さんは目を丸くしたが、すぐに柔和な笑みを浮かべた。
「緋真にそう言われると嬉しいな。かっこいいなんて、あまり言われないから」
「そう……?」
伊織さんのことを、かっこいいと思う女性は世の中にごまんといるはずなのに……自覚がないのかしら。
そうこう話しているうちに、写真撮影が終わったのか、先ほどの新郎新婦が掃けていく。
軽く会釈をし、鳥居へと足を進めた。
「ドレスだと背中が出るデザインが多いでしょ? だから、和装のほうがいいかなって」
「やっぱりそういう理由だったんだ」
背中を隠すドレスもあったがデザインは限られている。であれば見え方を気にするよりも、完全に覆ってしまえる和装のほうが気が楽だったのだ。
「……本当はドレスも着たかった?」
「うーん、実はちょっとだけ」
ウェディングドレスに憧れたことがないと言えば嘘になる。しかしながら、物心ついたときには既にコンプレックスがあったし、おそらく無理なのだろうと理解はしていた。正しくは”諦めて”いたのだけれど。
「でも後悔はしてないよ。強いて言えば、伊織さんのタキシード姿見たかったな」
「大したものでもないと思うけど」
「そんなことないよ! 伊織さん、かっこいいから何でも似合うと思う!」
食い気味に否定したあとで我に返る。伊織さんは目を丸くしたが、すぐに柔和な笑みを浮かべた。
「緋真にそう言われると嬉しいな。かっこいいなんて、あまり言われないから」
「そう……?」
伊織さんのことを、かっこいいと思う女性は世の中にごまんといるはずなのに……自覚がないのかしら。
そうこう話しているうちに、写真撮影が終わったのか、先ほどの新郎新婦が掃けていく。
軽く会釈をし、鳥居へと足を進めた。