片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
 大きな手で私の髪を梳きながら後頭部を抑えると、ゆっくりとベッドの上に押し倒される。その間も互いに唇を離すことなく夢中で合わせていると、この行為自体が交合なのかと思えるほどだ。

 このままずっとキスしていたい――そう思った瞬間、するりと腰紐を抜かれる感覚に体を揺らした。

「……ゆっくり脱がしたいなって思ったけど、これじゃあ仕方ないか」
「っ……」
「下着も可愛い。緋真のイメージぴったりだな」

 隠す隙もなく、下着が露になる。浴衣ならば素肌に羽織るものだが、初夜だからこそと付けていたのは正解だった。それに、先日彼に見せられなかった下着を身につけたかったから。

 自分のものなのに恥ずかしくて、思わず目を逸らしてしまう。

「恥ずかしい?」
「うん……でも、大丈夫……」

 これからもっと、恥ずかしいことをするのだから。下着くらいで、ドギマギしちゃダメよ。

「嫌だったらすぐ言って」
「んっ……」

 指先が首筋から胸元にかけて、つうっと降りていく。伊織さんはその道筋を辿るように唇を這わせて、柔らかいリップ音を立て始めた。

 首、鎖骨、肩、腕……上半身すべてにキスの雨を降らせると、くすぐったいような言い得ぬ感覚に身を捩った。

 やがて彼の手が下着の上から膨らみを揉みしだく。
 身に着けた淡い水色の下着をまじまじと見つめ、伊織さんが口を開いた。

「緋真によく似合う色だ」
「そう……?」
「見合いの時に着ていた服を思い出すよ」

 あの日、普段着ないアイスブルーカラーのワンピースを新調した。やや若すぎやしないかと心配していたが、杞憂だったようだ。

「……脱がすのが惜しいけど、もっと見たい」
「あ……」

 パチン、と控えめな音と共にホックが外され、解放された胸がふるりと揺れた。
 
「緋真の肌、すごく綺麗」
「そんなことない……」
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