片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
 愛撫を繰り返しながら、私の反応を確認するように視線を合わせる。そのうちにじわじわと下半身への熱を感じ、無意識に股をこすり合わせた。

「……こっちも良くなってきたかな」

 微かな動きも見逃すまいと、伊織さんの手がショーツをなぞる。
 その感覚に無意識に体がピクリと反応した。

「……怖い?」

 これから起こることすべてが未知で、ほんの少しだけ怖い。
 だけど――

「伊織さんに抱かれたい、から……怖くない……」
「っ……」

 言い切ると、伊織さんは面食らったように視線を逸らす。
 その後で、小さくため息をついた。

「そんな殺し文句言われたら、途中でやめてあげられないよ」
「あっ……」

 ショーツを剥ぎ取られ、股の間に彼のしなやかな指が滑り込む。

「できる限り優しく抱くから。俺に身を預けて」
「うん……」

 迫りくる快感に、目をきつく瞑る。
 宣言の通り彼は、とても丁寧に抱いてくれて、痛みに耐えながらもその夜私たちはひとつになった――。



 しばらくベッドの上で抱き合いながら余韻に浸ったあと、汗と欲にまみれた体を流すため露天風呂へ入った。もちろん、今度は伊織さんと二人で。体を重ねた後でも温泉に入るのはまた違う恥ずかしさがあり、縮こまってしまう。

「緋真、もう少しこっち」
「……十分近いよ?」
「せっかく一緒に入ってるのに、寂しいな」
「わっ……」
 
 するりと腕を引かれ、後ろから抱きしめられる形で伊織さんの腕に収まる。抱きとめられた腕にはしっかりと筋肉があって、背中に当たる胸板が生々しい。

 先ほどこの体に抱かれていたのだと思うと、また体の奥が疼いた。

「あの、この体勢は……」

 耳元に息がかかって、このままじゃ再び感じてしまいそうだ。

 懇願するように呟けば、伊織さんは謝って向かい合わせにしてくれた。

「見られたくないよな。ごめん」
「あ……」

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