片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
「熱はない、か。体調が悪いわけではない?」
「っ、平気だよ……」
突然近づいた距離に、心臓が早鐘を打つ。同時にかあっと頬が熱くなった。
「……あれ、でも顔赤い。やっぱり熱あるのかも」
「そうじゃなくて……」
そう言って、伊織さんはわざとらしく口角を上げる。
そして否定する間もなく、口づけを落とされた。
「んっ……」
重なった唇から、すぐに舌が割り入る。首筋に触れた彼の手のひらが、覆うように輪郭を撫でた。際限なく深まるキスは気持ちが良くて、このままずっとしていたいとさえ思ってしまうほどだ。
「い、おりさん……」
息継ぎの合間に、彼の胸を押し返す。すると伊織さんは、してやったりな顔をして体を離してくれた。
「ああ、ごめん。緋真が可愛くてつい」
「そんな……」
「それに昨日の夜は一人だったから、緋真不足かな」
ああ、まただ。私に優しくするのも、喜びそうな言葉をくれるのも、全部責任感からなのだろうか。そう思うと、途端に重石を飲み込んだ気分になる。
痛みにほんの一瞬顔をしかめると、伊織さんが心配そうにこちらを覗き込んだ。
「……どうかした?」
「う、ううん。そうだ夕飯、作ってくれたんだよね。伊織さんのご飯楽しみだな!」
「緋真」
誤魔化してその場を離れようとすれば、腕をしっかりと掴まれてしまう。
先ほどの甘やかな雰囲気ではない。伊織さんの表情は真剣だ。
「何かあったって顔してる。隠さないで」
「っ……」
「もしかして……また白鷹さんに何か言われた?」
ただ「何でもない」と笑顔を作ればいいのに、今の私にはそれすらできなくて。伊織さんにはすべて見透かされてしまう気がした。
まだ真実を彼の口から聞く覚悟はできていないが、これ以上は隠しきれない。
「……白鷹さん、昨日また教室のビルまで来たの。授業はなかったのに」
「っ、平気だよ……」
突然近づいた距離に、心臓が早鐘を打つ。同時にかあっと頬が熱くなった。
「……あれ、でも顔赤い。やっぱり熱あるのかも」
「そうじゃなくて……」
そう言って、伊織さんはわざとらしく口角を上げる。
そして否定する間もなく、口づけを落とされた。
「んっ……」
重なった唇から、すぐに舌が割り入る。首筋に触れた彼の手のひらが、覆うように輪郭を撫でた。際限なく深まるキスは気持ちが良くて、このままずっとしていたいとさえ思ってしまうほどだ。
「い、おりさん……」
息継ぎの合間に、彼の胸を押し返す。すると伊織さんは、してやったりな顔をして体を離してくれた。
「ああ、ごめん。緋真が可愛くてつい」
「そんな……」
「それに昨日の夜は一人だったから、緋真不足かな」
ああ、まただ。私に優しくするのも、喜びそうな言葉をくれるのも、全部責任感からなのだろうか。そう思うと、途端に重石を飲み込んだ気分になる。
痛みにほんの一瞬顔をしかめると、伊織さんが心配そうにこちらを覗き込んだ。
「……どうかした?」
「う、ううん。そうだ夕飯、作ってくれたんだよね。伊織さんのご飯楽しみだな!」
「緋真」
誤魔化してその場を離れようとすれば、腕をしっかりと掴まれてしまう。
先ほどの甘やかな雰囲気ではない。伊織さんの表情は真剣だ。
「何かあったって顔してる。隠さないで」
「っ……」
「もしかして……また白鷹さんに何か言われた?」
ただ「何でもない」と笑顔を作ればいいのに、今の私にはそれすらできなくて。伊織さんにはすべて見透かされてしまう気がした。
まだ真実を彼の口から聞く覚悟はできていないが、これ以上は隠しきれない。
「……白鷹さん、昨日また教室のビルまで来たの。授業はなかったのに」