片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
そう思うと胸が張り裂けそうな気持ちになり、衝動的に彼を抱きしめていた。
「それは違うよ。……私ね、さっきはすごく怖かった。あの場で誰かが怪我するかもって思ったのはもちろんだけど、一番は伊織さんがまた誰かのせいで苦しむんじゃないかって。それだけは絶対に嫌だったの」
彼にはこれ以上、他の誰かの責任を背負ってほしくないって思ったのだ。自分のことを含めて。
「確かにその不安は伊織さんがいるから感じるものだけど……取り除けるのも伊織さんしかいないから……自分だけを責めないで」
彼を失うかもしれない不安も、精神的に苦しめてしまうかもしれない不安も、すべては伊織さんを愛しているから故の感情で。そのことを伊織さんが気に病む必要なんてない。
「……俺はどうしたら緋真を安心させてあげられる?」
抱きしめる腕に力を込めて、伊織さんが呟く。いつも毅然とした態度で、弱音なんて吐かないのに、その声は今にも消えてしまいそうだ。そんな彼が心から愛おしいと思った。
「……じゃあ、強く抱きしめてほしい」
「……こう?」
「うん……もっと」
言われるがままに、伊織さんが抱擁に応えてくれる。今すぐにすべての不安と恐怖を取り除くのは、どうやっても難しいだろう。それでも、力強く広い胸の中に抱きとめられると、不思議と少しずつ薄れていくのを感じた。
「……キスも」
「ん……」
伊織さんは巻きつけた腕を緩めると、そっと頬へと口づける。
そのまま乾いた唇を滑らせ、唇が重なった。互いの唇を浅く食み合う、丁寧なキス。舌も絡めていないのに、やけに甘美に感じられた。
「それは違うよ。……私ね、さっきはすごく怖かった。あの場で誰かが怪我するかもって思ったのはもちろんだけど、一番は伊織さんがまた誰かのせいで苦しむんじゃないかって。それだけは絶対に嫌だったの」
彼にはこれ以上、他の誰かの責任を背負ってほしくないって思ったのだ。自分のことを含めて。
「確かにその不安は伊織さんがいるから感じるものだけど……取り除けるのも伊織さんしかいないから……自分だけを責めないで」
彼を失うかもしれない不安も、精神的に苦しめてしまうかもしれない不安も、すべては伊織さんを愛しているから故の感情で。そのことを伊織さんが気に病む必要なんてない。
「……俺はどうしたら緋真を安心させてあげられる?」
抱きしめる腕に力を込めて、伊織さんが呟く。いつも毅然とした態度で、弱音なんて吐かないのに、その声は今にも消えてしまいそうだ。そんな彼が心から愛おしいと思った。
「……じゃあ、強く抱きしめてほしい」
「……こう?」
「うん……もっと」
言われるがままに、伊織さんが抱擁に応えてくれる。今すぐにすべての不安と恐怖を取り除くのは、どうやっても難しいだろう。それでも、力強く広い胸の中に抱きとめられると、不思議と少しずつ薄れていくのを感じた。
「……キスも」
「ん……」
伊織さんは巻きつけた腕を緩めると、そっと頬へと口づける。
そのまま乾いた唇を滑らせ、唇が重なった。互いの唇を浅く食み合う、丁寧なキス。舌も絡めていないのに、やけに甘美に感じられた。