片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
どれくらいそうしていたのか。唇はすっかり潤っていて、彼の唇が離れていった。
胸は温かい気持ちで満たされていて、先ほどの不安も消えてしまうほど。
伊織さんのキスは、どんな薬よりも効き目があるみたいだ。
だけど――
「……やっぱり、不安は消えないよ」
「え?」
「伊織さんが傍にいてくれないと。だから……これからもずっと一緒にいて。それが一番安心する」
自分から言っておいて、何だか恥ずかしさが込み上げてくる。
再び伊織さんを引き寄せると、首筋に顔を埋めた。
「……ああ、約束する。俺は緋真を絶対に手放すつもりはないし、ずっと傍にいる」
しっかりと囁いて、伊織さんの大きな手が頭を撫でると、体中が安心感に包まれていった。
「今夜は、このまま抱きしめて寝てほしい、な」
「いいよ。今日だけじゃなくて、毎晩そうするから」
そう言って、彼が布団の中へと潜り込んでくる。
ぴたりと体を寄せ合うと、互いの隙間がなくなった。もう誰も入る余地もないくらい。
胸元からは、とくんとくんと規則正しい鼓動が。頭上からは優しい息遣いが聞こえてきて、その心地良さに包まれて、ゆっくりと目を閉じた。