片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
◇
朝食を済ませたあとは、支度を済ませて伊織さんの車に乗せられた。行く先も頑なに告げられず、小田原方面へ車を走らせること二時間ほど。到着したのは、箱根にあるホテルだった。
「え……ここ……」
「来たことある?」
「来たことっていうか、神花リゾートのホテルだよね? それに……」
何だろう、見覚えがあるような。単純に、ホームページか何かで見たことがあるだけなのか。
「もしかして……」
「そう。昔、緋真と出会ったホテル。さすがに覚えてないかな」
「ごめん、ぼんやりって感じ……。でも、どうしてここに?」
「もう少しだけお楽しみにしてて」
「ええ?」
まるで子供のような笑みを浮かべて、伊織さんが私の手を引く。ここまで来てまだ種明かしされないなんて。この後何が起こるか、まったく想像ができない。
しかしながら彼は教えてくれる気はなさそうで、引かれるままにエントランスをくぐった。
伊織さんがフロントで手続きを済ませた後で、ホテリエに連れられて中を進んでいく。緊張でドキドキしていると、やがてとある部屋の前で立ち止まった。
ドアが開き一歩中へ踏み入れると、煌びやかな純白のドレスが飾られている。