片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
「だから、私も伊織さんに感謝してる」
「……そっか。嬉しいよ、そう言ってくれて」
お互いの気持ちを伝え合うと、彼は握った手に力を込める。
「これから……また緋真を不安にさせたり、傷つけたりすることがあるかもしれない。そうさせないつもりだけど、この先何十年も一緒にいるなら、何があるかわからないし。でも、もしそうなったら俺が必ず救うって約束する。できる限り不安も取り除くし、傷だって癒すから。そうできるように、ずっと緋真のすぐ傍にいるよ」
この先の未来、何においても“絶対”はない。伊織さんの言葉は、飾りのない本心で、何よりも信じるに値するものだと感じた。
「ありがとう……。でも、守られてるだけは嫌だな。私も伊織さんにとってそういう存在になりたい。二人で支え合っていくのが夫婦なのかなって思うから」
「……ああ、そうだな」
「それから……私も傍にいさせてほしい、です」
「もちろん。途中で嫌だと言っても、離してはあげられないな」
「嫌だなんて、絶対ありえないよ」
互いに微笑み合ったあとで伊織さんが手の甲にキスを落とす。
そのまま立ち上がると、ゆっくりと二人の距離を縮めた。
誓いのキスの予感に目を閉じれば――
「愛してるよ、緋真」
低く落ち着いた声が響き、柔らかく唇が重なる。
触れるだけのキスは何よりも尊くて幸せで、永遠のように感じられた。