BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
「何してるんですか!」
海岸に女性をおろし怒鳴るが、
「・・・」
女性は何も答えない。

しかし、女性の顔を見て驚いた。
見覚えのある顔。

「あなた」
相手も俺のことを思い出した様子。

しばらく無言のまま動けなかった。

海に入ったのは奏太の母親だった。
奏太の死から6年。
1度も会ったことがなくても、すぐに分かった。

「先生、死なせていただけませんか?私、死にたいんです」
真っ青な顔をして言う。

彼女はまた海に飛び込みそうで、俺はこのまま放っておくことが出来なかった。

俺は彼女を車に乗せた。
もちろん、奏太の父親に連絡することも、病院に連れて行くことも考えたが、俺としても奏太の父親には会いたくない。
それは何年たっても、俺にとっての触れられたくない部分だから。

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