BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
「次、鈴子の試合だよ」
少し興奮気味の宝。
「ああ」

その時、場内アナウンスとともに鈴子入場。

女性にとって褒め言葉かどうかは分からないが、いつもは見ない精悍な表情。
うっすらと汗をかいた体からは気迫が伝わってくる。
ボクシングはショーではないため、派手な演出は基本的にない。
しかし、その分選手と観客の距離が近く応援は白熱する。

鈴子と相手選手がリングに上がり、合図とともに試合開始

1ラウンド・・・2ラウンド・・・3ラウンド
初めのうちは互角の戦いだった。
相手選手は20歳くらいの若手選手。
相手のパワーを鈴子のテクニックがかわしていく。

しかし、
6ラウンド・・・7ラウンド
あきらかに鈴子の足が止まった。
当然、動きも悪くなる。

「リン!リン頑張れ」
会場の所々から声が上がる。
鈴子はファンの間ではリンと呼ばれている。
鈴子だからリン。明快だ。

「リン!」
宝も声援を送る。

8ラウンド
相手のジャブやフックが鈴子をかすりだした。
冷たいようだが、勝敗が見えてきた。
その時、相手の放ったボディーブローが右脇腹にクリーンヒット。
鈴子が膝をついた。

「立てー」
「リン、立て!」
声が飛ぶ。

鈴子は立ち上がった。

9ラウンド
見ている方が辛くなるような試合。
何度か顔面を打たれた鈴子は、目の周りを腫らして唇からも血を流している。
「鈴子、頑張れ」
それでも宝は応援を続ける。

10ラウンド
開始早々に相手が払ったストレートが綺麗に決まり、鈴子はダウンした。
そして、起き上がれなかった。
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