BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
Side 宝
迷惑な客

午後1時
今日は土曜日。
いつも訪れるビジネスマンやOLさん達は少ないが、学生や家族ずれで店内は賑わっていた。

ウイークエンドランチは、タコライスや、煮込みハンバーグ。
色とりどりの野菜でサラダバーも用意。

いつの間にか店の外まで順番待ちの列ができている。

「忙しそうね。何か手伝おうか?」
鈴子が入り口ドアから顔を覗かせる。

「鈴子。入って」
私は鈴子を招き入れた。

すでに1時を回ったというのに、店内の混雑は収まらない。
このままでは終わりが見えない。

鈴子は従業員用のエプロンを着けて洗い物をはじめた。
ホールはバイト2人で切り盛りし、私は料理に徹する。
時々、外に並ぶお客さんのために飲み物をサービスする鈴子。
うーん。助かる。

1時半を回る頃、行列もやっと引けてきた。

「すみません。お待たせしました」
外で待つ最後のお客さんを店内に案内する。

同時に、男性の2人ずれが店に入ってきた。

「すみません。ちょうど満席なんです。少しお待ちいただけますか?」
鈴子が頭を下げる。
「えー。待つの?」
不満そう。

「申し訳ありません。外の椅子で少しお待ちください」
私もカウンターから出てお願いする。
「はー。外で待つの?」

店内はスペースがないため、外で待ってもらうしかない。
きっとこの人達は、「もういいよ」って帰って行くだろうと思った。

しかし、
「ごちそうさまでした」
先に来ていたカップルが、ちょうど席を立った。

「すぐに用意ますのでお待ちください」
バイトの裕貴君がテキパキと片付ける。

その間にも、
「早くしろよ」
「カウンター席かよ」
などとブツブツ呟く。

席に案内されてからもニコリともしない2人に、私はなんだか嫌な予感がした。
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