BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
「どうぞ」
警官がコーヒーを差し出す。

「平井さん。被害届を出すお考えがありますか?」
確認するように訊く。
「いいえ、自分でも調べていますので。今はまだ警察に届けるつもりはありません」
「そうですか。嫌がらせにしても悪質ですので、いつでもご相談ください」

なぜか、亮平がホッとしたようにため息をついたように見えた。

店で暴れた男たちは、器物損害で送検されることとなった。
私と鈴子の怪我については、訴えないことにした。
彼らにも言い分はあるわけだし、ネット嫌がらせについては追及されたくない。
それに、私たちがひつこく言えば相手は鈴子から被害を被ったと訴えるだろう。そうなったら、鈴子が困ることになりかねないし、それは望まない。

「では、こちらの要件は以上です。皆さんお帰りいただいて結構です」
警官が席を立ち、つられて私たちも立ち上がった。

「宝」
急に亮平に呼ばれた。

「鈴子、先に行っていて」
そう言うと、私は亮平に向き直った。
< 28 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop