BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
頑固な、宝
こんなに傷だらけなのに、病院へは行かないと言い張る宝に無性に腹が立つ。
俺は乱暴に宝の腕をつかむと、自分の方へ引き寄せた。

「痛いっ」
思わず宝から声が漏れる。

顔をゆがめる宝を睨みながら、俺はさらに力を込めた。

「剛、痛いって」
必死にふりほどこうとする宝。

「手も足も血を流して、顔にまで傷をつけて・・・何考えているんだ」
「仕方ないじゃない。私が望んだことじゃないわ。なんで怒るのよ」
感情を無くした顔の宝が、俺を睨み返す。
確かに、宝は被害者だ。

「だから、病院へ行こう」
「いや、行かない。その必要は無いの」

はあ?
意味が分からない。
 
トントン。
会議室のドアが開き、50代くらいの警官が入ってきた。

「どうもご苦労様です」
挨拶なのだろうか、そう言うと会釈をした。

「お世話になりました」
俺も頭を下げる。

「ご主人ですか?」
「いえ・・・」
俺は言葉を詰まらせる。

「友人です。心配して駆けつけてくれたんです」
いつの間にか腕をふりほどいた宝が、警官に説明した。

友人。
俺たちは友人なのか?
違うだろう。
でも、言い返せない。
俺たちはいつまで経っても『友人』としか名乗れない関係。

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