BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
その後、俺たち3人は俺が乗って来た車に乗り込んだ。
宝は不満そうだったが、車は病院へ向かった。

「だから、仕方なかったの。男たちが急に暴れ出して、私ともみ合いになって、宝は止めようとしただけ」
鈴子が今日の経緯を説明する。

「急に暴れるって、何かきっかけがあったんじゃ無いのか?」
「それは・・・分からない」

なんか、違和感がある。
何かを隠されているような気がする。

「本当にそれだけ?」
ルームミラー越しに宝を見る。

コクン。と頷く宝。

「何で、俺を呼ばなかったの?」
「え?」
「だから、警察沙汰になって、怪我までして。困っているときに、なんで俺を呼ばなかったの?」

「剛、仕事中だったでしょ」
困った顔の宝。

「あいつは呼んだじゃないか」
小さな声で俺は呟く。

クスッ
宝が笑った。

「笑うな」
あー、気分が悪い。

20分ほどで病院に到着した。
病院には到着したものの、車が駐車場に止まってからも宝は動こうとはしない。

「ずっとこうしている気?」
車を降り、宝の座る後部座席のドアを開けて、俺は宝が降りるのを待った。

あきらめたように俺の顔を見る宝。

「私、怪我については訴える気がないの」
「何で?」
「それは・・・相手が鈴子も手を出したって言い出すかもしれないから。実際、鈴子は一度も手を出してないわよ。でも、もし相手の言うことが信じられたら、伶子に迷惑がかかるかもしれない」

そんな馬鹿な。
だからって、許すのか?

「じゃあ、訴えるかどうかは後で話すことにして、とりあえず受診しよう。傷の手当てをして、背中の痛みも調べてもらおう」
「・・・」
ためらっている宝。

俺だってこれ以上は譲れない。

「これ以上意地をはるなら、力ずくで連れて行くよ。今はそれくらい頭にきているからね」
そう言うと、宝に近づき腕をつかむ。

「分かった。受診します」
俺の手を振り払い、宝は車を降りてきた。
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