BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
「野崎さん」
持っていた箸をトンと置いた。
「あなたこそ、宝に干渉しすぎです。別れたんだから、放っておいてください。あなたが現れると、宝が動揺するんです」

「君に言われる覚えはない」
皮肉っぽく俺を見る、元旦那。

むかつく。

「何度も言いますが、俺たちは結婚を望みません。ただ一緒にいたいだけです。それも、許してはもらえませんか?」

フフフ。
彼が笑った。

「何ですか?」
完全に本性を出してしまった俺は、不機嫌なまま彼に訊く。

「僕が何を許すって言うの?すでに、僕と宝は何の関係もないよ」
「じゃあ、何で今日警察署にいたんですか?」
「えっ。訊いてないの?」
「何をですか?」

「あの店は僕の名義になっているんだよ。契約の時にその方が便宜上いいだろうとの判断でね。」

そんな話、聞いてないぞ。
じゃあ、彼は事務手続き上で警察に呼ばれただけってことか?
宝が呼んだわけではないと?
なんか、頭が混乱してきた。

「君は自信がないの?」
「はあ?」
「宝をつなぎ止めておく自信がないとか?」

気がつけば、アルコールもビールから日本酒に変わっていた。
彼も俺もほどよく緊張もほぐれて、かなり本音が現れている。

「結婚したらいいじゃない。なぜこだわるの?奏太のためなんて言うなよ。それは君たちの逃げだ」
なんだか挑戦的な彼。

「結婚は、世間が許さないでしょう。それ以前に・・・宝がしないだろうと思います」

「意気地なしだなあ」
フフフ。
皮肉っぽく笑う彼。

一体彼は何が言いたくて、俺をここに呼んだんだ。
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