浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです～自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です～

嘘っ！

　わたしの「黒バラの葬送」シリーズ五冊を彼の方に押しやり、それから紙袋をこちらへ引き寄せ中身を取り出してみた。

「嘘っ！」

　思いっきり否定というか疑ったというか、そんな一言が口から飛び出してしまった。

　嘘でしょう？

　女の腐ったみたいな描写を描き続けている人って、アレックスだったの？

　手に持っている本の表紙には、まぎれもなく「白ユリの楽士」シリーズ第一巻、著者ナタリア・イグレシアスとでかでかと主張している。

　どこからどう見ても間違いないわ。

　なんてこと……。

「えっ？嘘じゃないんだけど」

　ローテーブルの向こうから、女の腐ったみたいな描写を描き続けている人がやわらかい笑みとともに言ってきた。